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間違いを見つけた有識者のみなさま、こちらまで御一報いただければ幸いです。
- 凡例
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- 初出は花月新誌四〇号(一八七八(明治一一)年)。
- 底本は「柳北全集」(明治三〇年、博文館)です。
- 原文に改行はありません。
- 変体仮名はふつうの仮名に、旧字体は新字体に変えています。
- 【原文】
- 世ははかなきものと知ればはかなく。うれしき物と思へはまたうれしくも過行れぬるそいとめでたし。
- 此翁させる業もなく。また才もなく。世をも人をも避けたまひし古の聖が儔にもあらす。
- また塵の界に遂ひ降されて戯れ遊ふ謫仙にもあらす。
- たヽ女わらへの笑ひ興せん為めに。さまヾヽの手振して。踊りありき行くこそあはれにやさしかりけれ。
- その家はいつこ。其名はなにといふことも知らねと。女わらへのへにかんと呼ひはやすをの。年久しくそなり侍る。
- 見よや世の人の心にもあらぬさまして。斗米銖両の為めに走り廻るにくらふれは。この翁の咎もなく誉もなく。心ゆたかにうかれありくさまの。はるかに立まさりて見えぬるは。あなうらやましの紅勘やな。
- あな尊とのへにかんやな。
- 儔 --- =儔類。仲間。類。
- 塵 --- 仏教で、煩悩を指す。
- 謫仙 --- 「たくせん」。仙界から人間界へ追いおとされた仙人。
- 斗米銖両 --- わずかなもの。「斗米」は一斗(18リットル)の米で、わずかな米、わずかな給料を意味する。「銖」はキビ(イネのような植物)百粒の重さで、「両」=24銖、ともにわずかな目方の単位。「銖両」で軽微なもののたとえ。
- 尊と --- 「みこと」。貴人の尊称。
- 【口語】
- 世というものは、はかないものだと思えばはかなくなるが、うれしいものだと思えばうれしいうちに過ぎて行き、それならたいそう喜ばしいことです。
- この翁は、手に業もなく、また才もなく、世をも人をもお避けになった古の聖の類でもない。
- また、煩悩の世界にとうとう落とされてしまった、戯れ遊ぶ仙人でもない。
- ただ女子供を笑わせるためだけに、様々な身振り手振りで踊り歩いて行くその姿には、しみじみとした優しさがありました。
- 家はどこなのか、名前は何というのかを人は知らなかったが、何年も久しい間、女子供は「紅勘」と呼び囃しておりました。
- 見なさい、世の人が我を忘れてわずかな利のために走り廻るのに較べれば、この翁の罪もなく名誉もなく、満ち足りた顔で浮かれ歩く様子のほうが、はるかに勝っています。なんとも羨ましい紅勘です。
- なんとも貴人の紅勘です。
- 【メモ】
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- 紅勘の「紅」を「女子供」の意味に取れば、「紅勘」とは勘定高いという意味の「利勘」の反対語と考えられます。
- この「紅勘」は、“無用の人”柳北自身がそうありたいと願うひとつの像だったような気がします。
- そして、冒頭の文「世ははかなきものと知ればはかなく。うれしき物と思へはまたうれしくも過行れぬるそいとめでたし」は、いつでも忘れないようにしたい言葉です。
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