Last modified at 2002/12/23 01:22 
間違いを見つけた有識者のみなさま、こちらまで御一報いただければ幸いです。

紅勘の賛

凡例
【原文】
  1. 世ははかなきものと知ればはかなく。うれしき物と思へはまたうれしくも過行れぬるそいとめでたし。
  2. 此翁させる業もなく。また才もなく。世をも人をも避けたまひし古の聖が儔にもあらす。
  3. また塵の界に遂ひ降されて戯れ遊ふ謫仙にもあらす。
  4. たヽ女わらへの笑ひ興せん為めに。さまヾヽの手振して。踊りありき行くこそあはれにやさしかりけれ。
  5. その家はいつこ。其名はなにといふことも知らねと。女わらへのへにかんと呼ひはやすをの。年久しくそなり侍る。
  6. 見よや世の人の心にもあらぬさまして。斗米銖両の為めに走り廻るにくらふれは。この翁の咎もなく誉もなく。心ゆたかにうかれありくさまの。はるかに立まさりて見えぬるは。あなうらやましの紅勘やな。
  7. あな尊とのへにかんやな。
【口語】
  1. 世というものは、はかないものだと思えばはかなくなるが、うれしいものだと思えばうれしいうちに過ぎて行き、それならたいそう喜ばしいことです。
  2. この翁は、手に業もなく、また才もなく、世をも人をもお避けになった古の聖の類でもない。
  3. また、煩悩の世界にとうとう落とされてしまった、戯れ遊ぶ仙人でもない。
  4. ただ女子供を笑わせるためだけに、様々な身振り手振りで踊り歩いて行くその姿には、しみじみとした優しさがありました。
  5. 家はどこなのか、名前は何というのかを人は知らなかったが、何年も久しい間、女子供は「紅勘」と呼び囃しておりました。
  6. 見なさい、世の人が我を忘れてわずかな利のために走り廻るのに較べれば、この翁の罪もなく名誉もなく、満ち足りた顔で浮かれ歩く様子のほうが、はるかに勝っています。なんとも羨ましい紅勘です。
  7. なんとも貴人の紅勘です。
【メモ】

表紙へもどる