RALPH VAUGHAN WILLIAMS
(1874〜1958)
ENGLAND
・AChronology
好きな作曲家はたくさんいますが、中でも特にお気に入りが、
今世紀を代表するイギリスのシンフォニスト、
RALPH VAUGHAN WILLIAMS(レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ)
その人です。
晩年「グランド・オールドマン」と呼ばれた彼の写真は、ただの
イギリス爺ちゃん。その作風も、イギリスののどかな田園風景を
思わせる穏やかなものが多く、G.ホルストやP.グレンジャーと
一緒に民謡の採取を行うのがライフワークだったそうです。
反面、モーリス・ラヴェルに師事した管弦楽法のスペシャリスト
であり、9曲ある交響曲や管弦楽曲の中で、その能力をフルに
発揮しています。数ある合唱曲やモテットも魅力。
吹奏楽にも名曲を残し、約5分の小品トッカータマルティアーレは
卓越した技法で管楽合奏の可能性を極限まで追求しています。
日本ではまだメジャーと言えない作曲家かもしれませんが、心に
染み渡る美しい旋律と時に目を見張るようなオーケストレーション、
是非、多くの人に聞いてほしいです。
ヴォーン・ウィリアムズとの出会い
1枚のCD。衝撃的な出会い。
今まで自分の吹いていた楽器が、これほどまでに美しい音色を
出せ、これほどまでに表現力があったとは!
そして、その魅力をこれほど引き出せる曲があったとは!
この曲こそ、ヴォーン・ウィリアムズの「TUBA協奏曲」。
演奏者は、ジョン・フレッチャー。
以来、フレッチャーの音色は私の理想であり続け、RVWのこの曲、
とりわけ第2楽章「ROMANZA」は私の永遠の課題曲であります。
このCDのカップリング(というかメイン)が交響曲の5番だったので、
これにつられて交響曲を
全曲購入。とりわけ第2番「ロンドン」は大のお気に入りです。
ROMANZAという曲
TUBA協奏曲の第2楽章「ROMANZA」。
民謡調の美しく哀愁ただよう旋律で始まるこの曲は、民謡をこよなく愛し、
また、管弦楽に精通していたRVWの、正に傑作といえる作品です。
そもそも、この時代の、しかも純音楽たる交響曲を9曲も書いた(映画
音楽もありますが・・・)大作曲家が、TUBAというマイナーな楽器の
ために筆をとったというのは奇跡に近いですね。
弦楽器の調べを引き継ぐように上昇音階から始まり、オーケストラの中
では気づかれないけど、その広い音域を十二分に発揮し、ゆったりと
したテンポの中にテクニカルな要素も取り入れる。
大きな図体からは想像もつかないけど、ドイツ語では女性名詞である
TUBAの暖かい音色をここまで引き立たせる旋律、伴奏。
いつ聴いても、心にしみる曲です。
聴くときは「夜の曲」だと思って聴いてください。
ROMANZAの吹き手
ジョン・フレッチャーというTUBA吹き。
1987年に若くして亡くなった彼は、このヴォーン・ウィリアムズの協奏曲を
吹くために、この世に生を受けたのではないかと思わせます。
出だしのワンフレーズ、弦楽器の前奏からホルンに先導されるように
レミファソラレレドと、D-durの優しい長音階をゆっくりと登ります。
この協奏曲、1楽章から3楽章まで上昇音階が中心となって旋律が
構成されていますが、その中で最も優雅で、少し寂しく、そして暖かい、
非常に人間的でさまざまな表情を秘めているのがこの楽章の
この旋律です。
美しく流れるこの旋律の中で、フレッチャーは流れを壊さずに、非常に
明確なフレージングをしています。彼の凄いのは、フレーズの最後の
音の美しさ。音がなくなるまできちんと吹き切り、フレーズの最後まで
メロディーとしての美しさを保ちます。しかも、次のフレーズへ何の
違和感もなく引き継がれて行く。これが曲全体を一本の美しい糸で
結ばれているかのように感じさせます。
北欧にもミハエル・リンドという美しい音を持つTUBA吹きがいますが、
この点、フレッチャーには及ばないなあ、といつも感心しています。
テクニカルな中間部を経て第一主題が戻る個所、この楽章で最も
高いHi-Eの音を擁するフレーズが、同時に最も熱い、最も唄う個所に
なるのですが、ここでのフレッチャーの音色も美しさと伸び、そして胸が
熱くなるような表情が一体となり、この曲のベストポイントです。
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズという作曲家とジョンフレッチャーという
演奏家。
作曲家と演奏家でこれ以上のベストコンビはないと断言します。
DISCOGRAPHY
John Fletcher, Andre Previn &London.Symphony Orchestra
Patrick Harrild, Bryden Tomson &London.Symphony Orchestra
Phillip Catelinet, Barbirolli &London.Symphony Orchestra
Michael Lind, Leif Segerstarm &Royal Stockholm Philharmonic Orchestra
Arnold Jacobs, Daniel Barenboim &Chicago Symphony Orchestra
Hans Nickel, Jan Van Der Roost &Slovak radio Symphony Orchestra
Floyd Cooley, Donald Deroche &Depaul University Wind Orchestra
James Gourlay, Garry Cutt &Grimethorpe Colliery Band
James Gourlay, Gavin Sutherland & Royal Ballet Sinfonia
Walter Hilgers, Brandenburgisches Staatsorchester Frankfult