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〈思い出のレストラン〉子供の頃(昭和40年代)は今の様に外食チェーンやコンビニの類はほとんど無くて、たまに外でごはんを食べるだけでもとてもわくわくしたものでした。ローカルな話ですが、当時、熊本市内の中心部に【山小屋】というレストランがあって、ここでの外食は自分の中で特別なものでした。 何が特別かといえば、店には中庭があり熱帯植物が生茂って、そこにとても大きな水車がゆったりと回っていました。イメージ的には、山小屋と言いつつも、“南海の楽園ハワイ”に対する憧れから来る日本的解釈(妄想)で作られた空間だった様な気がします。実際にはハワイ旅行なんて庶民には夢の様な時代でしたし、当時、巷では“ジャングル温泉”なんていう温室+温泉+熱帯植物のコラボ(笑)なんていう妙なものも流行っていました。 子供の自分にとって【山小屋】の雰囲気は日常とは違うとても魅力的のもので、目の前のとてつもなく大きな水車を見ながらする食事は、スクリーンで見るゴジラ映画くらいにスリリングなものでした。(大人になった現在、同じ場所へ行けたとしたら、随分小さな物に見えるのかもしれません。)その景色は何十年も経った今でもうっすらですが、まぶたに焼き付いています。 今となっては建物自体影も形もありませんし、当時の写真も持っていませんし、何を食べたかなんていう事も思い出せませんが、霧の向こうのぼんやりした記憶を元に今回作品を描いてみました。余談ですが、山小屋で食事をした後はおもちゃの【ポレエル】へ行くというのが、自分にとって当時のゴールデンコースでした。2009.3 中根ケンイチ |