出産日記 (by みほ)

「いよいよ陣痛が始まった〜」と言うことで、6月2日の夕方、陣痛室に入る。
陣痛室には3つのベッドがあったが、この日は他に出産間近の妊婦さんは居なく、部屋には私だけだった。
ところが、1時間もすると痛みが和らいできてしまった。
私の行っていた病院は立会い出産を推奨していて、旦那さんも陣痛室と分娩室に入れることになっている。
ゆたちんは、会社を早退して来てくれたが、余裕の表情の私を見て気が抜けた様子。
「夕飯食べてくる」と、いったん外に出掛けて行った。

本格的に陣痛が再開したのは、午後9時ごろだったと思う。
4〜5分間隔で痛みが襲ってくるが、この頃はまだ、ゆたちんと話したり、時間を計ったり、トイレに行く余裕もあった。
子宮口が10cm開いたら分娩になるのだが、この時まだ子宮口は2cm。
一般的には1時間で1cm開くということだから、明け方には出産できると思っていた。

夜12時が近くなって、看護婦さんに「旦那様は、一度お家に帰られたらどうですか?」と勧められる。
今夜は長引きそうだし、旦那さんもいったん寝ておかないと身体がもたないだろうと言うことで。
私としては、陣痛室の薄暗い裸電球の下で一人陣痛に耐えるのは寂しかったし、正直居て欲しかったが
「どっちでもいいよ」と決断はゆたちんに任せる。
結局、ゆたちんは居てくれると言う。優しいゆたちんには、本当に感謝!
ひと昔前だと産婦人科は男子禁制で、妻の陣痛中、旦那さんは家に帰されてしまったらしい。
親の世代には「甘えてる」と言われそうだが、私は苦しい時にゆたちんがそばに居てくれて安心できたし
出産を乗り越える勇気を与えてもらった気がする。
実際には腰をさすってもらう事くらいしかできないけれど、私にはゆたちんの存在は本当にありがたかった。

日付が変わって、6月3日、夜1時ごろから急に痛みが激しくなる。
陣痛の間隔は1〜2分。ゆたちんと話す余裕も、水を飲む余裕もなくなる。
看護婦さんが来て内診してくれるが、子宮口がまだ3cmしか開いていないと言う。
もう3時間くらい経ってるのに!こんなに痛いのに、どうして(;_;)
ここからの時間は長かった・・・
ひたすら陣痛に耐える。ゆたちんは、ひたすら腰をさすってくれる。
明け方、また看護婦さんが来て内診してくれた。
自分では痛みで気づかなかったが、破水していると言う。抗生剤を点滴される。
子宮口は、まだ4〜5cm。
外が明るくなってきて、看護婦さんがカーテンを開けてくれたのを覚えている。
痛みの波が引くと、意識が朦朧として少し眠るようなのだが、数十秒後、また痛みで目が覚める。
頭の中では、アメリカのテレビドラマ 24(トゥエンティ フォー)で、ジャック・バウワーが拷問にかけられてるシーンを
思い出していた。
ジャックは超やり手の捜査官で、拷問にかけられても情報を漏らさないよう、気を失うように訓練されているのだが
私も痛みで気を失えたらどんなに楽かと思った。
24では、ジャックが気を失うと悪者達は水をかけて目を覚まさせていたが、痛みの波で目が覚める陣痛も
まるで拷問だと思った。

朝9時になって、医師が診察に来てくれた。
内診の結果、子宮口はまだ6cm程度。
「今日の昼か、遅くても夜にはお産になるから」なんて、先生は涼しい顔で言ったが、私はこれ以上、昼までなんて
とても我慢できないと思った。
明け方、隣のベッドに他の妊婦さんが入って来たのは知っていたが、恥も外聞も捨てて
「もうイヤ〜!切って出してください〜」
と先生に叫んだ。
が、先生は無視。こんな妊婦に、あきれてたのか、見慣れていたのか・・・(^_^;)
子宮口を開くため、薬を膣から挿入され、さらに腕に筋肉注射みたいなのをされる。
隣の妊婦さんが分娩室に行く声が聞こえた。
向こうは明け方に入院してきたのに・・・心底うらやましかった。
1時間くらい経って再び内診すると、薬が効いてきたのか、子宮口は8cm程度になっていた。

結局、分娩室に入ったのは昼の12時ごろ。
あとはイキむだけ。
イキむのも苦しかったけれど、痛みに耐えてやっとここまで来たのに、今さら帝王切開になるのはゴメンだったから
頑張って出すしかないと思った。
「これで最後。これで最後。」と思いながら、20回くらいイキんだと思う。
そして13時19分、出産!最初赤ちゃんが泣いてくれなくてヒヤリとしたが、口と鼻を吸引されて程なく産声をあげる。
3986gの大きな男の子!!!
赤ちゃんの身体を拭いてから、看護婦さんが私の元に連れてきてくれた。
新生児はちっちゃくて軽ーいものだと想像していたが、ちびはずっしり重かった。
顔立ちもしっかりしてて、あまり新生児という感じがしない。
抱っこしたら感動で涙が出るかな〜なんて妊娠中は想像していたが、実際には「やっと終わった〜」って気持ちの方が
強く、放心状態だったように思う。
その後体温を測ると39.2℃と出て少しビックリしたが、達成感と安堵感とで全然苦しい感じはしなかった。

熱冷ましの点滴を受け、その夜は母子別室でゆっくり休む。
翌日、目が覚めてみると、何だか全身が痛い。
会陰切開の傷だけでなく、ふくらはぎ、太もも、腰、腕までもが筋肉痛。
たぶんイキむときに全身に力が入っていたんだと思う(^_^;)
でも陣痛の痛みに比べたら、全然たいしたことない。

出産前は、子供はもう一人欲しいと思っていた。
なるべく年の近い兄弟にしたかったので「年子でもいいかなあ」なんて思っていたのだが、もう一度あの晩を体験するのかと
思ったら、すぐには子供を作る勇気がなくなってしまった。
とは言え、出産から1ヶ月経った今、陣痛がとにかく痛かったことは覚えているが、どんな痛みだったのか良く思い出せない。
きっと、忘れるように脳ができているんじゃないかしら?
じゃなければ、皆とても2人、3人と子供を作ることなんてできないもんね。
それに何より、我が子はものすごーく可愛い(^-^)!!
ちびを見ていると、「自分を犠牲にしても守ってあげたい」って気持ちになる。
ちびちゃん、いろいろあったけど無事に産まれてきてくれてありがとう。仲良く、楽しく暮らして行こうね!

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